大好き通販デザイン!EC系デザイナーの徒然ブログ

Amazon、楽天など商品画像・バナーなど全般請け負うSOHOデザイナーです。

漫画村閉鎖騒動に想う。

7日から、11時~朝7時まで仕事という生活を送っております。

いま、午前3:20です。

ちょっと休憩しながら(大根のお味噌汁を飲みつつ)Youtubeを見ようかな?と思い、ANNニュースを自動再生していました。

すると、このようなニュースが。

漫画村」って、初めて知ったのですが、海賊版の漫画アップロードサイトなのですね。
そういうサイト、未だにあるんだ…というか、こんな大々的に許されていたの?
と、かなりショックです。

さすがにもうこの時代なんだから、そこらへんはちゃんと取り締まられていると思っていた…。甘いか。甘いですよね。
まあ、要は「無料ですよ」と言えば群がってくるネットユーザーと言うのは、悲しいかなごまんといるわけで、そういう方のアクセスを見込んでビジネスしようという人がいるのも、悲しい現実ですよね。

そもそも、有料のものを無料でホイホイ享受できるなんて、そんなことないない。
いかがわしい「お金を差し上げます」みたいな迷惑メールと同じに見えます。
ただもっと衝撃的なのはこのニュースの中で、
「なくなると困る」
と発言している人がいること…
(ニュースのインタビューなんて、劇団員さんのバイトのひとつだ、なんていう都市伝説は置いておいてですよ)

 

本来、対価を払って受け取るべきものが、無料で受け取れるわけないでしょ!

このやるせなさ、はっきり言って販促画像作成にも聞いたことあるぞ!

 

通販画像の作成において、クライアントから
「どっかから拾ってチャチャッとやっちゃってください」
「他社でも同じ商品売ってるので、そこの画像引用してください」
「フォトストックのカンプ画像の、ウォーターマーク消して合成してください」
と言われたことのあるデザイナーさん、いらっしゃいませんか?

私は独立した後はそういうクライアント様にはめぐりあっていませんが(有料画像のカンプって、修正して使ってはいけないのですか?と質問されたことはあるけれど)、これもまた悲しいことに、会社員時代の上司が同じことを言っていました。

 

当時の私の勤める会社は完全なブラックでした。

福利厚生ナシ、ボーナスもちろんナシ、評価制度ナシ(おい!)、健康診断ナシ、入社した当初数年は厚生年金すら加入していなかったレベルです。

六本木の雑居ビルに当時はあって、満を持しての入社だったのに初日で泣きました。
なんで割れソフトでデザインしなきゃいけないの…!

しかし生活に窮していたため、なんなら私が内側から変えてやるから、見てろよ…とヘンな闘志を燃やしていたのですが、ある日、なけなしのヘンな闘志も一瞬で吹き飛ばされるような上司とのやり取りが発生。

 

「初稿確認お願いします」
「?この埋め込んである画像、これなに?変な字が載ってるんだけど」
「カンプです。校了出たら、購入して差し替えになるのですが」
「あのさ、素材高いじゃん。その変な字、消してよ。稟議通すのかったるいし」

 

返事に窮してしまったため、いったんデスクに「はい…」と行って戻ってみたものの、どうしよう、この初稿?
カンプの文字消して使うのは、技術的にはできなくない。
でも、できるできないという技術の問題じゃなくないか…?

 

「すみません部長」
「ん」
「ここ、本画像の稟議通らないですかね…?小カットですから、1500円くらいなんですけど…」
「いやーw んーw ほら、できるでしょ、ピャッと」
「え、でもそういうことやっちゃいけないから、カンプ画像に字が載ってるんであって…」
「じゃなに、他に方法あんの?」←ズルい話題のすり替え
「んー… 自社で撮るとか」
「自分、撮れんの?」
「んー… じゃあ撮ります…」
「あそ、じゃよろしくね」
「はい(うわぁぁ…なんでオートマティックに引き受けてんだ私のバカ;)」

 

当時私の勤めるブラック会社のメインビジネス、それは占いサイト。
Yahoo!やらの大手プロバイダも占いサービスってやってますが、まああんなかんじのメディアを自社開発&運営していました。
そのメディアを雑誌広告として掲載するため、私は月に3~4本の広告企画を考案して、構成を作り、ライティングを起こし、デザインを作り、webデザイナーにLPを作ってもらうという仕事をしていました。

その雑誌広告に載せるための、ちょっとスピリチュアルなイメージの女性の写真を使いたかったのですが、撮る羽目に…。

モデルなんか、知り合いにいないし、どうすべ。
最悪、自分がモデルになる?おいおい心霊写真撮ってどうする!
いや、そういう問題じゃない!なんですぐ人身御供になろうとするかこのバカチンが!
原稿企画上、ベストは女性の写真だけど、タロットとかのイメージに置き換えるか?
そのためには、ライティング部分を書き直さないと…。
いや、そこ変えたら広告のコンセプトが覆るし、何なら作り直し。
雑誌広告なので、締め切り厳守だし、代理店に週末には投げておかないとならないし、校閲でひっかかったら修正して再入稿する予備日が必要になるし、さてどうしましょう。

 

そして結局、写真じゃなくて自分で絵を描くことにしました。

私はもともとクリムトミュシャが大好きで絵を描くのが趣味で、ゴシックっぽいイラストや漫画を描いていたので、自宅のぼろいWinXPにメタクリエイションのPainterを使って、絵を描いて原稿に当て込み、無事その時は入稿することができたのでした。

私の眠る時間と引き換えに…(泣)
もちろん、私の貴重な睡眠時間を、誰も補填はしてくれません。

 

そんなことは日常茶飯事というめちゃくちゃブラックな会社でしたが、漫画村騒動のニュースで一気に部長の顔を思い出してしまい、この時間に思いがけずブルーに。
ちょっとお味噌汁を飲みながら、息抜きに動画を見ただけなのに(笑)

 

で、問題なのは「無料配信は違法」とわかっているのに、なぜ利用してしまうのか?
ということだと思います。

ニュースの中でも、男の子がそういっているのを見て、
「この子たちは、なぜ無料での漫画のアップロードが違法なのか、説明してもらう機会に巡り合えるのだろうか?」
と思いました。

誰からも教えてもらえなかったら、そのマインドは色々なところに影響してしまいます。
「ちょっとくらい、いいじゃん」
「みんなだって、わかってやってるんだし」
「そこに用意してあるんだから、つい使っちゃうのはしょうがないでしょ」
きっと、この程度の認識なのでしょう。

違法とは言え、ちょっとしたおとがめくらいでしょ?
違法とは言え、まさか刑務所に入るほどじゃないでしょ?
違法とは言え、他人が死ぬわけじゃないでしょ?

そんな風に意識が変遷したら…?というのは、突飛なことだと思うでしょうか。

「んな、大げさな」

そう感じた方は、ものの「価値」について非常に鈍感な方です。

漫画村の漫画の違法アップロードということを前提に話せば、漫画という「創作物」の「価値」について鈍感な方です。
もっと言うと、無料で消費しようというのですから、その漫画には「お金を払うだけの価値がない」と言っているのと同じです。

「価値のないものを読む時間と労力は持ち出すんかい」と笑ってしまうわけですが、でも「無料」に弱いのは本当に身近で、悲しい、多くの現代人に潜む卑しさです。

 

最近、ある人に
「有料フォトストックサイトのカンプのウォーターマークを、消して使ったりするのって、やっぱりいけないんでしょうかね?」
と聞かれました。
私は「ダメですよ、そう決まっているのだから」という答え方は、絶対にしちゃいけないなと感じて、上記と同じ内容の返事をしました。

「あなたは、本来価値あるものとして提供されている有料の画像を、お金を払う価値はない、でも無料なら使うよと言っているんですよ。
その写真を撮ったカメラマンの技量、経験、センス、機材、時間、モデルさん、写真が持つすべての価値は、あなたのその行為で否定されるんです。
私がそのカメラマンやモデルだったら、非常に悲しいです」

その人は、その後なんにもお返事をくれませんでしたが、それは私の言葉を受け止めてくれたからなんだと思います。
曲がりなりにも、その人は物販をするビジネスマンであり、商品を企画製造したり仕入れて売る側です。
自分の仕事に置き換えて、ハッとしたのだと思います。

私の言うことを、理解してくれたからこそ、言葉が出なくなってしまったのだと、そう思うようにしています。

 

漫画村騒動の、ニュースのインタビューで「漫画村が無いと困る~」とペロッとこぼしてしまう大学生さん。
この子たちと同じように思う人もいれば、
「自分は違法サイトは使わない!こんな子たちと自分は違うぞ!」
と思う人もいるでしょう。
でも、後者の責任を考えてみる機会でもあると思うのです。

違法なんだからダメなものはダメだよ、じゃなくて、【なぜダメなのか】を教えること。
それをしてくれる人に巡り合えないと、そのまま人生をずっと進んでしまう人が増えてしまいます。

 

私は曲がりなりにもデザイナーです。
知的職業についている自負があります。
自分のサービスを安売りできない事。
自分の技術、時間、センス、ノウハウ、経験、制作環境への投資、自分のすべての価値を貶めない事。
買いたたこうとするクライアントを諭す事。
違法なソフトやフォント、素材の使用をしない、させないように行動する事。
ぜんぶ、私がデザイナーをする上での責任であり、それがプロ意識だと思っています。
なぜなら、それができないデザイナーはデザインという仕事の未来を潰すから。
「対価をとっていればすでにプロです」
という言葉が跋扈していますが、不足だと思います。
「対価と責任の両方をとるからプロ」です。

 

じゃあ、ニュースに出ていた「漫画村が無いと困る~」と言っていた大学生さんに、諭して、教えてあげるべきなのは?
親?友達?教師?マスコミ?…
教えるべき責任もあれば、率先理解する責任もありますが、学ぶというのは、外部からもたらされないとわからない事が多いというのも事実です。

 

漫画村騒動について、「違法はいけないよねー」で止まってしまう方がもし、周囲に居たら、そもそもなぜ違法なんだろうね?というお話をしてみてほしいです。

お子さんに。友達に。生徒に。ユーザーに。

20年近く昔、某出版社で漫画を描いていた私だからこその、お願いです。
いや、ほんとに。